「太陽光を浴びると本当にうつ病や季節性うつ病の症状が改善するのか?」
そう思う方もいるのではないでしょうか。
実は、太陽光を浴びることでうつ病や季節性うつ病の症状が改善されることが科学的に証明されています。
この記事では、太陽光がどのようにして精神的な健康に影響を与えるのか、具体的なメカニズムや効果的な日光浴の方法についてご紹介していきたいと思います。
季節性うつ病(SAD) が太陽光により改善する
冬季のうつ症状を持つ被験者は、夏に日光を多く浴びることで気分が改善されることが報告されています。
また、冬に日光を浴びる時間が短いことが、うつ症状の一因とされています。
1.シカゴ地域の冬季うつ病患者の研究
この研究は、シカゴに住む12人の冬季うつ病の患者が、夏と冬の1週間、それぞれの日中にどれだけ外に出て日光を浴びたかを記録したものです。(Eastman, 1990の研究結果)
主な結果
- 日光曝露時間: 夏季は1日に平均3.0時間、冬季は1日に平均1.2時間日光を浴びました。つまり、夏は冬の2倍以上の日光を浴びていました。
- スケルトン光周期: 夏の方が冬よりも日光を浴びる時間が4~5時間長く感じられました。夏の方が夕暮れが遅く、夜明けが早く感じられるためです。
この研究からわかること
- 現代の都市生活では、夏も冬も日光を浴びる時間が十分ではありません。冬季季節性情動障害の治療として、もっと明るい光を浴びることが必要です。
- 日光の強さや感じ方は、気分や健康に大きく影響するため、日光を浴びる機会を増やすことが重要です。
結論
この研究から、冬季うつ病の患者が夏にもっと日光を浴びることの重要性がわかります。また、都市生活では季節を問わず日光を浴びる時間が短いことが課題となっています。
2.季節性情動障害(SAD)の女性と日光曝露の関係
この研究は、季節性情動障害(SAD)の女性が夏と冬にどれだけ日光を浴びるかを調べました。
特に、日光曝露時間が気分や覚醒度に与える影響や、光療法の必要性について考察しています。
(Graw et al., 1999の研究結果)
結果
- SADの患者さんは、夏になると気分や覚醒度、睡眠が良くなるが、光を浴びる量とは関係がなかった。
- 夏には、SADの患者さんは健常者よりもたくさん外に出ていた。
- 冬には、SADの患者さんと健常者の外出時間はあまり変わらなかった。
この研究からわかること
- SADの患者さんは、夏に健常者よりも多くの時間を外で過ごす
- 冬にうつ病になるのは、光の量が足りないからではなく、光に対する感受性が違うからかもしれない
- SADの患者さんは、夏にたくさん光を浴び、冬には特別な光を浴びる治療(光療法)が必要である
結論
SADの患者さんは、冬でも健常者と同じくらい外に出ていますが、夏にはもっと外に出ています。
冬にうつ病になるのは、光が足りないからではなく、光に対する感受性が高いからかもしれません。
そのため、SADの患者さんには夏にたくさん光を浴び、冬には光療法が大切です。
光療法はどのくらい効果があるのか?
1.SADの46歳女性に光療法を実施してみた
イスラエルに住む季節性情動障害(SAD)の46歳女性に、明るい光療法の効果を調査しました。
結果
- 46歳の女性が季節性情動障害(SAD)の症状で、10,000ルクスの明るい光療法を3週間受けました。
- 治療の結果、ハミルトン不安・うつ病評価尺度とベックうつ病評価尺度で74-80%の改善が見られました。
- しかし、治療をやめた後、1週間で元の状態に戻りました。
この研究からわかること
- 季節性情動障害(SAD)は、特定の緯度に限らず、イスラエルのような場所でも発生します。
- 明るい光療法は効果的ですが、その効果は短期間であり、治療をやめるとすぐに再発します。
結論
季節性情動障害は、明るい光療法により一時的に改善されますが、治療を中止すると症状がすぐに再発するため、持続的な治療が必要です。
1.SADの患者10人に高強度光を当ててみた
季節性情動障害(SAD)の患者10人に、10,000ルクスの高強度光と400ルクスのプラセボ光を当ててその効果を比較しました。
(Magnússon & Kristbjarnarson, 1991の研究)
結果
- 季節性情動障害(SAD)の患者10人を対象に、10,000ルクスの白色光を40分間浴びる治療と、400ルクスの赤色光を浴びるプラセボ治療を比較しました。
- 10,000ルクスの光療法は、プラセボと比べてSIGH-SAD、HDRS、BDIの評価で大幅に改善を示しました(P = 0.011, P = 0.017, P = 0.028)。
- 10,000ルクスの治療ではSIGH-SADスコアが平均16.1ポイント改善し、プラセボ治療では平均5.0ポイントの改善でした。
- 夏に再評価したところ、ほとんどの患者が無症状でした。
この研究からわかること
- 高強度の光療法(10,000ルクス)は、短時間の曝露でも季節性情動障害(SAD)の症状を大幅に改善します。
- プラセボ治療よりも高強度光療法の方が効果的です。
- 夏に自然光を多く浴びると、光療法で改善した患者は無症状になる傾向があります。
結論
高強度の光療法(10,000ルクス)は、短時間の曝露であっても季節性情動障害(SAD)の症状を効果的に改善します。プラセボ治療よりも効果が大きく、光療法で改善した患者は、夏に症状が出にくくなることが示されました。
Moscovici, 2008
Magnússon & Kristbjarnarson, 1991
結論
太陽光を浴びることは、うつ病や季節性情動障害(SAD)の症状改善に効果的です。
特に光療法は、多くの研究でその有効性が示されています。
日光に適度にさらされることが、全体的な気分の向上と精神的な健康に貢献してくれます。
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